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今日、雪が降った。
今シーズン初めてのことだ。

九州は雪が降らないと思っている人が多いみたいだけど、それは間違えだ。
南に位置しているとはいえ、本州と同じように四季はあるのだ。
冬はそれなりに寒いし、自然ではないが人工スキー場だってある。

とは言え、自分が住んでいるこの町は、
海に近いせいか真冬になっても雪なんて滅多に降らない。
降ったところで積もることなんてない。
だからこそ儚く、とても愛おしいものに思えるのかもしれない。

昇降口で彼女と会った。
クラスは違う、接点はない。
だけど知ってる、自分と彼女はそんな仲。
自分等の関係をどう名付ければ良いんだろう。
そんなことを考えていた。

突然彼女が両手を空に向かって掲げた。
正直驚いた。
なにしてるんだろう、って。
誰でも普通はそう思うだろう。
突っ込むかどうか迷ったけど、放っておいた。

そしたら彼女が笑った。

自分に笑いかけているわけじゃない、それは知っている。
それでも彼女の声が自分には眩しくて、
だからつい一歩、また足を引いて歩いてしまう。
だから自分等の距離は、また広がっていく。

物理的な距離と心理的な距離。
どっちの長さの方がより切ないんだろうか。
考えてみるけど、答えはなかなか出ない。

考えていたら、また一歩、一歩、と。
彼女の小さな背中がまた遠くなっていく。

そして気が付く。
この時間にも、僕等の間に空白が作られていく。
どっちかじゃなくてどっちも辛いんだ、って心の中で悟る。
そう頭の中を過ぎったら、喉の奥から言葉が漏れた。

「好きなんだよ」

きみが。

その大事なひと言が喉元から出てくることはなかったけど。
押し出さなかった、ってのがむしろ的確な表現。
度胸がないの、チキンってやつ。

でもね、それが自分。
全然恰好良くなくてきみに頼ることしかできないけど、それでも良いのだろうか。



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プロフィール
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智詠 (ともよ)
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