「ゆーきだー!」
九州の小さな町に初雪が降った。
思わず両手を上げ、空に拝むようなポーズを取る。
テンション高いね、ってよく言われる。
でもね、いつもこんな調子じゃないんだよ。
あなたの前だから、つい、声を張り上げちゃうの。
そうじゃなかったら恥ずかしくて、この雪のように溶けちゃうから。
・・・・・・それはちょっと大袈裟な表現で。
好きなんだけど。
それは、ふと聞こえたあなたの声。
「雪?」
振り返り、後ろからゆっくり歩く彼を見る。
遠くて聞こえなかったのかな?
あなたはわたしの問いに答えなかった。
自慢じゃないけど、歩くのは結構早い方。
それは決して運動神経が良いと言ってるわけじゃない。
友達から、「足が短いのに頑張るね」って幾度もからかわれた。
友達の言葉としてはどうかと思うが、それもわたしへの一種の愛情だと捉えておく。
本当は隣を歩きたいけど、手を伸ばせばすぐ届く距離にいたいけど、
それができないのはわたしの弱さ。
この関係を壊したくない。
その一心で、また笑顔を作る。
アホだな、とか。
意気地なし、とか。
何度自分を罵ったことだろうか。
すきだな、とか。
触れたいな、とか。
何度あなたを想い、胸を焦がしただろうか。
叶わない夢は捨てた方が良い。
この気持ちを早く摘み取らないと、って自分の体がしきりに危険信号を出している。
心と体、体と心。
どっちがより自分に近いんだろう。
一、二、三歩。
四歩目で再び振り返る。
ねえ、今あなたはどんな顔をしてる?
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