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チャランチャランチリン

携帯電話の着信音が聞こえる。
こんな朝っぱらから誰だろう?
重い瞼を半分まで開け、ディスプレイに映る名前を確認する。

「なに?」

人の安眠妨害しやがって。
思いっきり不機嫌な声を出す。
作りもなにもしない、出るがままの声。

「あんた今何時だと思ってんの。いい加減起きなさい」

うるさく、耳障りな声。
この狂った九官鳥のような声の主はお母さん。
いくら声が響かないようにと携帯電話を使って話しても、
彼女の場合あまり変わらない気がする。

適当に相槌を打って一方的に電話を切る。
朝からうるさくてやってらんない。
そう思って二度寝を試みようとするが、再び着信音が鳴り出す。
もちろん着信元は狂った九官鳥。
わざとらしく深い溜め息をつき、観念して重い体を起こす。
このまま無視していたら後が怖いからだ。

「着替えてから降りてきなさいよ」

顔を見るなりこの言葉。
なんでトイレに行く前に着替えなければならないのか。
生理現象には逆らえない。

「自分の家なんだからいいじゃん」

面倒くさー、と呟きながらトイレに入る。
文句言うなら二階にもトイレを設置して欲しい。
向こうの学生寮の方にはあるのに。
更年期か知らないが、最近お母さんは前にも増して妙にカリカリしている。
お願いだからこっちに当たらないで欲しい。

「早く着替えてよ、今日は出入りが多いんだから。
いつまでもそんな恰好してたらみっともないでしょ」

顔を洗っているとまた後ろから文句を言われる。
なんで人の出入りが多いのだろうか。
お客さんが来る予定でもあるのだろうか。

「今日なんかあるの?」

素朴な疑問を投げかけると、「バカ」と罵声を浴びせられた。

「今日は新入居者が来る日って何回言った?」

ほらまた怒る。
ただ訊いただけなのになんでそんなに怒るのかが分からない。
これだから五十前のおばさんは怖い。
しかも「こんなんだから赤点なんて取るのよ」と
関係ないことまで言い出してきた。

「赤点は社会だけだもん。それ以外は全部学年上位ですー」

わざと大きな声で反論するが、声が返ってこない。
聞いちゃいないのだろう。
今日は忙しいのは事実らしい。
さっきからお母さんがあちらこちら急いで歩き回っている。
よく働くな、と我が母親ながら感心する。
邪魔にならないよう、これ以上文句を言われないうちに、
静かに自分の部屋へ戻った。

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プロフィール
HN:
智詠 (ともよ)
性別:
女性
職業:
学生
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